「地球変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2007年2月に発表した第4次報告書では、地球が確実に温暖化していること、温暖化には人間活動が起因していることが初めて明記された。
原因は温暖化ガスの増加。産業革命以降、石炭をはじめ、石油、天然ガス、焼畑、産廃まで加わ急速に増えている。温暖化ガスの濃度は有史から産業革命以前まで280ppm程度に急上昇した。これにより地球の平均気温は1906年から100年間に0.74℃上昇したとされている。

温暖化は、沿岸地域の水没だけでなく、異常気象の増加、マラリアなどの感染病の北限上昇、山岳地帯での氷河消滅や平野部での地下水塩化による水不足など壊滅的な影響が予想されている。世界レベルの対策が求められている。

IPCCでは、温度上昇2℃、温暖化ガス濃度に換算して475ppmを温暖化の限界点としている。そのために、今後2050年までに1990年の50%削減する目標を提案した。
これに対応して日本では、環境省がCO2を現状の70%削減する計画を打ち出した。この計画を実現するには、我々の社会のあり方を一変させ、低炭素社会に転換していかなければならない。
低炭素社会の実現に向け、住宅産業として何をすべきか。90年比でCO2を70%削減に対応した住宅を提案できているのだろうか。現状の家のつくり方のままでは、いくら設備を効率化しても無理だ。器自体を変えなければならない。
まず住宅産業は、日本の「次世代省エネ基準」がどんなレベルにあるかを知るべきである。ドイツ・イギリス・フランス・アメリカの4国と比べてみる。

たとえば東京の次世代省エネ基準である天井のグラスウール160mmの厚みは、アメリカで同程度の気候を有するエリアの30年前の基準でしかない。また、熱損失の割合が一番多い開口部については、日本以外の上記先進国ではアルミサッシを使うことは違法建築となる。

日本の省エネ基準は、これまでカナダの「R2000」をベンチマークにしてきたと思われる。この為いよいよとなれば、今後日本でも住宅の省エネ基準が強制法となることも予測できる。
そのときに備え、今から次世代省エネ基準の70%削減という「2050年レベル」を満たす住宅をつくっておけば、社会的寿命を保てる可能性が高い。一方、次世代省エネ基準さえ満たしていない住宅は資産価値を失うのではないだろうか。
また身近な家計問題として、電力や石油などが急騰する可能性も高く、将来は光熱費の支払いで住宅ローンが返済できない事態も起こりうる。電力会社や石油などの急騰に備え、エネルギー消費を抑える家づくりを今からはじめたい。

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我々が目指す高気密高気密住宅は、これまでの「北方型住宅」とは違うもの。東京・大阪・名古屋など日本の人口の大部分が住むⅣ地域に適した高気密高断熱住宅だ。
ただ、壁体内のつくりは「北方型」とほとんど変わらない。この点は北方地域で30年の実績をもつ断熱気密工法を採用する。
一方、南面窓をきわめて大きくとり、冬場は豊富な日射量を利用して最大限の太陽熱を取り込む。これにより暖房エネルギー消費量を削減する。 室内には熱容量の高い内装材にダイレクトゲインで日射熱を貯め込み室内を暖める。貯め込んだ熱は夜まで有効に活用する。夜間は開口部からの熱損失を防ぐため断熱ブラインドなどにより対策を行う。
日射量の多い太平洋側の地域では、Q値は必ずしも省エネ性を示す絶対の数値にはならない。南面に窓を多くとればQ値は下がるが、それでも日射取得量が非常に大きくなり、結果として暖房エネルギーを削減することができる。

温暖地に適した省エネ住宅の提案として重要なのが、冬寒くならないと同時に夏暑くない住宅だ。東京以南の温暖地の夏は湿度が高く日射熱遮蔽や熱気排出の仕組みを確保することで、日射による影響を少なくし、体感温度を改善する。
南面の窓には、日射角度に対する窓の高さや庇との位置を計算し、室内への日射を確実に遮蔽する。
夏季の日射による屋根からの輻射熱を遮断するために、屋根面には空気が流れる十分な通気層を確保することが重要。外壁の通気層は確保しているが、屋根面の通気層は意外と軽視されがちだ。十分な通気量を確保するために必要なことは、軒から吸入する空気量と、棟から排出する空気の流れがあれば、日射で焼けたスレートや瓦の熱は、通気層で排出され、さらに屋根断熱層で小屋裏に入って暑くてたまらない家は欠陥住宅と考えるべき。
住宅の最上部には、夏の留守中にたまった熱気を排出できる通気窓を設ける。十分に排熱して室内温度を落とせば、冷房の効率は上がる。屋根の気流層の出入り口面積を1対1に確保できるのは片流れ屋根。
さらに熱気を排出する通気窓を設けられるのがノコギリ屋根。この点、寄棟屋根には適切でない。切妻屋根もできるだけ避けたい。

2050年型省エネ住宅では、高価な建材を導入する必要はなく、設計の考え方や施工方法さえ習得すれば工務店であれば誰でも実践できる。一部の人しか実践できない省エネ住宅では普及しない。実際に我々が提案する「2050年型住宅」の仕様のコストアップは、追加する断熱材と気密補助材、南側の面積を広げた分のサッシ窓、日射遮蔽材くらい。これらのコストアップによってかかる住宅ローンの値上がり分は、節約になった光熱費分でまかなう程度に収める。お客様には、家計から余分にでるようにしない。規模にかかわらず一般の工務店でも全棟で実践してほしいと考えている。
日本では、良くも悪くもメーカーというモノ売り屋さんから得た情報を基本に家づくりをしている。メーカーの情報提供するのは当然。メーカーの情報にかたよりが生じることはどうしても避けられない。
例えば、省エネの基準値として、国はQ値(熱損失係数)、μ値(夏期日射取得係数)、C値(相当隙間面積)を設けている。Ⅳ地区では、99年から設置されたC値は、工務店であれば誰でも知っているが、それより前の92年に導入されたμ値を知る人は少ない。なぜこのような状況なのか?
私どもの意見ではこうだ。Q値、C値を改善する高額な商材や工法はたくさんあり、営業スタッフもたくさんいる。これに対し、μ値を改善はひと巻き200円の簾(すだれ)1本でも対応ができる。単価が安い商材にはメーカーも広告宣伝費をかけられないために省エネのための重要な性能基準が知られず、住宅の性能が偏ってしまったのではないか。
まず、つくり手が認識しなければならないことは、「情報はタダでない」ということ。目の前に指し出された情報を容易に受け取るのではなく、必要な知識や技術が何かを考え、自分の足で探す。そこで得たものは自分の血肉になるはずだ。様々な情報を自分で精査して習得すれば、コストを上げずに住宅の性能を高めることができる。この姿勢が失われているのが日本の現状ではなかろうか。

人口や世帯数が減少していく今後、新築住宅が一層冷え込むことは避けられない。これまでのように「キッチンはこんなに便利ですよ」「お風呂にはこんな機能が付きましたよ」と、メーカーの設備に頼って安々と受注できる時代は終わった。また、つくり手も建材・設備に頼っていたのでは、隣の住宅会社との値引き合戦になってしまうことに・・・
今求められるのは「深堀ができるつくり手」。各種エネルギー計算をきちっと示し、根拠に基づいた住宅を提案できる。その設計力・提案力が会社の奥深さなになる。
ただ、小さな工務店では具体的な数値計算ができる人材を育成するのは難しい現状もある。それでも、フランチャイズに加盟し本部の子会社のようになって家づくりの思想や経営を明け渡すのではなく、苦手な分野のみ外部と提携してうまく使いこなす。これが、これからの地域工務店のあり方ではないか。